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誰も知らないFUNKのシングルでHIPHOPを創る

アメリカ西海岸を代表するヒップホップDJ/レコード・ディガーの2人、DJ ShadowとCut Chemistが、1999年にリリースした「Brainfreeze」というDJミックス作品をご存知でしょうか?

 

「Endtroducing…..」などの名盤を残したDJ Shadow、西海岸アングラ・ピップホップの雄Jurassic 5のDJとして頭角を表したCut Chemist

互いに既に大きな功績を持つヒップホップDJで、世界を代表するレコード・ディガーの2人が、ディープ・ファンクと呼ばれるマイナーなファンクの7inchシングルのみでミックスをするという企画。

DJテクニックも一級品の彼らが、スクラッチ、2枚使いバリバリのタンテ4台体制で、誰も知らないファンク曲をヒップホップに料理しちゃうんだから、ま~~~すごい・・・

しかも全部7inchシングルで・・・

 

近年ではDJ KOCOさんの7″オンリーのスゴ技プレイが世界的に評価されていますが、それの源流と思ってもらえればイメージしやすいでしょうか。

 

ミックスで使用されている楽曲のほとんどは、60年代後半から70年代初頭の、極めてマイナーな音源ばかり。

御大ジェームス・ブラウンらによって広められたファンクの波は、アメリカ全土、いや、世界の隅々にまで行き届き、スーパースターに憧れた多くのファンク遺伝子を生み出しました。

しかし皆が皆うまく売れるわけではありません。ヒットに恵まれる人間なんてほんのほんの一握り。

それがどんなにクオリティーの高い楽曲でも、人知れず消えていったミュージシャンは無数にいます。

そんな埋もれた名曲にフォーカスを絞ったのが、ディープ・ファンクだったり、レアグルーヴという概念。

 

以前なにかの本でDJ Shadowが、消えたマイナー・ミュージシャンのレコードをプレイすることの意義として、「彼らも自分たちと同じミュージシャンで、そのシングルには彼らの敗れた夢が詰まっている」なんて語っていました。(うろ覚え)

夢破れたミュージシャンの想いも背負ってレコードをプレイするなんて素敵すぎるし、心持ちが桁違いだな~なんて感銘を受けたものです。

 

 

 

DJ ShadowとCut Chemistの「Brainfreeze」は、まだまだ知られていなかったディープ・ファンクという概念を、ヒップホップという船を使って、世界に広めた作品だと思います。

誰も知らないファンク曲を使っているにも関わらず、どこを切り取ってもヒップホップで、DJミックス作品というよりは、リアルタイムでサンプリングしながら大きな一つのヒップホップ曲を作っているかのような。

 

当時ヒップホップ小僧だった僕も、これにはガツンと脳天をやられまして・・・

そう、文字通り、ブレインフリーズに陥りまして・・・

 

僕の中でヒップホップの元ネタだけだったファンクという存在が、ファンクそのものとしてのかっこよさを持ち始め、独り歩きを始めた瞬間でした。

全く洗練されていない荒削りなサウンドと、詳細不明のバンド達、アメリカの田舎町で見た大きな夢と情熱。

閉められたスタジオの地下から泥に塗れたシングル盤が発掘された!?みたいな、レコード掘りにまつわるストーリー。

ShadowやCut Chemistに代表されるレコード・ディガーと言われる人たちへの憧れを大いに抱き、僕のレアグルーヴ探求の日々が始まりました。

20年以上が経った今でも、アフリカの音楽など未知のレコードへ対する渇望は、この時の衝撃から続いているのだと思います。

 

そんな僕が教科書にしたのが、この「Brainfreeze」

当時から高価で手が出なかった逸品もありますが、「Brainfreeze」のプレイリストから、実際にいくつかのレコードを見つけ、「Brainfreeze」を物差しにした価値観で、自分のディープ・ファンク像を探求しました。

 

CD、DVD、レコードと様々なフォーマットでリリースされていますが、僕が一番お薦めしたいのは映像とともに体験できるDVD版の「FREEZE」

 

ShadowとCut Chemistがプレイした音源をまとめた、「Brainfreeze Breaks」というタイトルのコンピレーション・アルバムも存在します。

 

 

僕の思い出話は程々にして、まずは「Brainfreeze」のミックス・ショウを観て、この素晴らしき熱量を体感してください!

僕の胸熱ポイントは、Reuben Bell – “Superjock”の「He’s number one, he’s the turntable king」というフレーズの時に、2人が互いを指さし合うシーンと、唯一とも言えるヒップホップ曲 Ultimate Force – “I’m Not Playing”がぶち込まれるところでしょうか!

 

 

 

 

 

 

「Brainfreeze」でプレイされるレコードはどれも稀少で、レコード店でもなかなか見かけることはありません。

FAMではこの度「Brainfreeze」でプレイされた楽曲と、それに関連するレコードを9枚セレクトいたしました。

今回入荷した9枚の紹介と、記事の一番下に「Brainfreeze」の曲目リストを掲載いたしますので、皆さんのレコード探求のマイルストーンにしてみてください。

 

 

⦿Fried Chicken – Funky D.J.

スローモー・ダウナー・ファンク!

Earnest Jackson “Funky Black Man”へのアンサー・カヴァーで、「Brainfreeze」で使用されたのはこちらです!

「Funky D.J.~♪」のフレーズで、Cut ChemistがShadowを指差すシーンにシビれました!

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⦿Nu People – I’d Be Nowhere Today

おそらくこのシングルのみで消えた男女混声グループによる、アタマのフィルインから後半のブレイクまで完璧な、これぞレアグルーヴ!これぞディープ・ファンク!!

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⦿Nu-Sound Express, Ltd. – Ain’t It Good Enough

後にRhyzeの名で2枚のアルバムを残す、ニュージャージーのファンク・バンドによる、ハイテンションなインスト・ブラス・ファンク!

B面はカーティス・メイフィールド作のスウィート・ソウル

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⦿Wilbur Bascomb & The Zodiac – Just A Groove In “G”

「Brainfreeze」でも印象的にプレイされた、ドラム・ブレイクから始まるファンク・クラシック!

ニュージャージー産マイナー・バンドのスプリット・シングル

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⦿Commodores – Keep On Dancing

ライオネル・リッチー在籍でオナジミのファンク・バンド

70年代から80年代にブレイクした彼らの記念すべきデビュー・シングルのはずですが、なぜか英ウィキペディアにすら載っていない・・・

Motown系列からデビューする3年前にリリースされた、Alvin Cashの疾走インスト・ファンク・カヴァー!

「Brainfreeze」でプレイされたのはAlvin Cashのヴァージョンですが、Commodoresのヴァージョンも負けず劣らずな強力トラックです

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⦿Lou Courtney – Hey Joyce

アタマの極太ブレイクからカッコよすぎな、特大ファンク・クラシック!

僕が「Brainfreeze」にくらった時に最も好きだった曲で、可愛らしいピンク&ブルーのラベルも最高です

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⦿7-Eleven – Dance The Slurp

ストローをすする音のブレイクがとってもユニークな、ノベルティ・ファンク・クラシック

セブンイレブンの販促用レコードで、「Brainfreeze」では45回転と33回転で使われていました!

ジャケでセブンの制服着たDJ ShadowとCut Chemistが手に持っているのがこのレコードですね

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⦿Reuben Bell – Leave My Kitten Alone

「Brainfreeze」でプレイされた”Superjock”が有名な、ルイジアナ出身の男性シンガー!

“Superjock”と同タイプの、ちょっと間抜けな感じが堪らない、ほっこり系サザン・ファンク・チューン!

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⦿Larry Sanders – Story Of My Love

盲目のキーボーディスト/シンガーによる、ドラム・ブレイクから始まるドファンキー・オルガン・ソウル!ソウルフルなファルセットに、突っ走るディープ・ファンク・トラックの対比がGOOD!

「Brainfreeze」の続編、「Product Placement」でもプレイされました!

※B面センターずれのため音歪みます

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「Brainfreeze」プレイリスト

Mix one

  • Lamont Johnson Quartet – “Thunder Kick” (trailer to unreleased film)
  • The Jules Blattner Group – “2001 – A Soul Odyssey”
  • Fried Chicken – “Funky DJ”
  • The Mohawks – “The Champ”
  • Reuben Bell – “Superjock”
  • Albert King – “Cold Feet”
  • Ultimate Force – “I’m Not Playing”
  • Eddie Bo and Inez Cheatham – “Lover and a Friend”
  • Mack Rice – “Three People In Love”
  • The Nu People – “I’d Be Nowhere Today”
  • Nu-Sound Express Ltd – “Ain’t It Good Enough”
  • Mystic Moods – “Cosmic Sea”
  • American Gypsy – “Inside Out”
  • Odetta – “Hit or Miss”
  • The Mar-Keys – “Grab This Thing (Part 2)”
  • Rusty Bryant – “FireEater”
  • Simtec and Wylie – “Bootleggin’ (Part 2)”
  • Wilbur Bascomb and the Zodiac – “Just a Groove In ‘G'”
  • Eddie Bo and The Soul Finders – “We’re Doin’ It (Thang) (Part 2)”
  • Rufus Thomas – “Sophisticated Sissy”
  • The Showmen Inc. – “The Tramp (from Funky Broadway) (Part 1)”
  • The Original Soul Senders – “Soul Brother Testify (Part 2)”
  • Rufus Thomas – “Itch and Scratch (Part I and II)”
  • Alvin Cash – “Keep On Dancing (Instrumental)”
  • Lou Courtney – “Hey Joyce”
  • Bummer radio spot

 

Mix two

  • The Singing Principal – “Women’s Lib”
  • Salt – “Hung Up”
  • The Soul Lifters – “Hot, Funky, and Sweaty”
  • Frankie Seay and The Soul Riders – “Soul Food”
  • The Interpretations – “Jason Pew Mosso (Part 1)”
  • Thunder and Lightning – “Bumpin’ Bus Stop”
  • Billy Garner – “I Got Some”
  • Pleasure Web – “Music Man (Part I and II)”
  • Gary Byrd – “Soul Travelin’ (The G.B.E.)” (Part I)
  • Clifton Chenier and Grandma Gee Gee – “Just Keep On Scratching”
  • “W” radio spot
  • Marlena Shaw – “California Soul”
  • The Vibrettes- “Humpty Dump (Part 1)”
  • Eddie Bo – “From This Day On”
  • 7-Eleven – “Dance the Slurp”
  • Kraftwerk – “Numbers”
  • Flash and The Five – “Flash It to the Beat”
  • Pearly Queen – “Quit Jivin'”
  • Tony Alvon and The Belairs – “Sexy Coffee Pot”
  • Chuck Mangione – “Hill Where the Lord Hides”
  • Funka Fize – “No Words”
  • Schooly D – “Gucci Time”
  • Jurassic 5 – “Unified Rebelution” (a cappella)
  • Third Guitar – “Baby Don’t Cry”
  • Don Pierce – “This Funky Thing”
  • Funka Fize – “Because You’re Funky”
  • The Troubleneck Brothers – “Back to the Hip Hop”
  • Stu Gardner – “Devil in a Man”
  • Samson and Delilah – “There’s a DJ in Your Town”
  • Giorgio Moroder – “Tears”
  • Tim and Bill – “Someone”

 

 

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