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1度目の長野

前回のお話はこちら

 

松本で入った韓国料理屋は、薄暗い店内でスクリーンの映像と共に矢継ぎ早にK-popが流れてくるタイプのお店だった。

松本に来てまで入るお店ではない。

案の定、怪訝な顔をして今にもお店を出たそうにしている一階店主と

その隣で少々テンションが上がっているように見えるタンザニア人の友人がいた。

多分、彼が今お世話になっている”幸子さん”とではたどり着かない場所だからだ。

 

タンザニア人の友人(ラマ君)はザンビア旅行の際に現地ガイドとしてお世話になって以来、

たまに連絡を取ってはお互いの家族や仕事の話をしたり、アフリカンファブリックを輸出してもらったりしていた。

 

2020年の4月以来、パンデミックの影響により観光客のアテンドの仕事は文字通り皆無となり、

奥さんと小さな子供がいるラマ家の生活はかなり厳しそうだった。

 

(2020年2月ザンビア共和国ナコンデ駅にて)

 

 

そういった事情も知っていたので、日本への旅費や滞在費はどうやって工面したのか、

そもそも何故長野なのか、家族も一緒なのか?など

様々な謎を抱きながらも、3年ぶりの再会を楽しみに長野へ向かった。

 

 

松本駅で待ち合わせ、一言目に「元気でしたか〜?」二言目に「太りましたね〜!」ときて

いきなりのストレートパンチ。

ノックアウト寸前のふらっふらな私の姿をラマ君は不思議そうな顔で見ていて、すぐに気を取り直した。

“痩せている”が褒め言葉なのは、限られた国の文化なのだ

(はあ、生きにくい)

 

再会早々に乾杯しながら、事の全貌が徐々に分かってきた。

・安曇野にある幸子さん(71歳)のお宅で3ヶ月間のホームステイをしている。

・そしてそれは幸子さんの招待によって叶った事。

もちろん、美談だけでは終わらない。

 

家族はどうしてるのかと尋ねると

『まぁコロナ離婚ですね〜』

と、多くを語らずともおおよその事情を察知させる

近年生まれたばかりの新しい日本語をあまりに流暢に使いこなすので、思わず笑ってしまった。

パンデミックで失ったものもあれば、得られたチャンスもあったという訳だ。

 

 

それにしても、”幸子さん”

聞けば聞くほどはヤバそうな匂いがプンプンする。

 

珈琲を求めてキリマンジャロへ単独長期滞在をしたり、

今回もラマ君のホームステイ終了と同時に、彼女も一緒にタンザニアへ行くそうなのだ。

71歳、いわゆる前期高齢者の女性にしてはかなり攻めた生き方をしている。

 

そんな幸子さんが今回我々にも会いたがっていて、なんなら今日泊まっていくとすら思っていたそうだ。

それならばとラマ君がタンザニアに帰国する前にもう一度長野へ来る約束をし、次はラマ君のホームステイ先の幸子さんのお家へお邪魔することになった。

 

(駅まで送った帰りにもらったラマ君お手製のブレスレット)

 

そしてこの時感じた”ヤバさ”は二度目の長野で想像を遥かに越えた形で証明される事となった。

なにせ幸子さんもまた”取り憑かれた人”だった。