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おばーちゃんホイホイ

私は髪がずっと長い。

人生の中でも、大半の期間で長いと思う。

幼少期にブランコから転落し、頭部を40針縫う大怪我をしたため、その傷痕によりできる髪型に制限がある。とはいえ、美容師になった今となれば大体はカバー可能だ。

だからたまに猛烈に短く切りたくなったりするのだが、その度に夫(一階店主)に大大大大大反対される。

これは”長い髪の女性が好き”という単純な好みの話ではもちろんない。

おままごとの様な夫婦の時期はとうに過ぎたし、お互い相手がどんな容姿でもそんな事はどうだって好きにすれば良い。健康でいてくれれば。

それなのに、髪を短く切ることに関してだけは大反対なのだ。

 

青森ー札幌を走る急行はまなすという夜行列車に乗車した時。

(今はなき急行はまなす)

(JRの浴衣とぶりっこの手)

(廊下にも簡易席があり外の景色が眺められる)

 

夜の22時ごろに札幌駅から乗車し、早朝5時ごろに青森駅に着いた我々は、そのまま弘前にある銭湯へ向かった。

旅の疲れを朝風呂で癒す最高の瞬間を迎える目前で、おそらく朝風呂仲間と思しきおばーちゃん3人組に取り囲まれた。全裸でだ。

物珍しそうに私の髪に触れ、盛んに話しかけてくる。

しかもあろうことか異国の言葉で話し出すものだから、思わず「ジャパニーズ!」と声高らかに言った。

通じたのか通じてないのか?

それにしても本当に一言もわからないな。

その表情と、髪を撫で回している様子を見るに、褒めてくれてはいるのだろうけれど。

昔ながらの銭湯なので、男風呂と女風呂を隔てる壁の上部は吹き抜けになっており、反対側の会話もなんとなく聞こえてくる。

脱衣所でも、お風呂場でも散々おばーちゃんたちに絡まれていた様子は男風呂にも響いていたらしく、

「えらい賑やかだったけど、あんたおばーちゃんに絡まれとらんかった?」

「うん、多分髪の毛褒めてくれてたっぽい。でも何でか分からんけど、みんな癖のある英語だったから何言ってるのかよく分からんかったんだよね」

その瞬間、私はハッと気づいた。

「いや違う!今ここは青森、ありゃ津軽弁だ!!!」

しかしこの、全く言語が分からないという絶望感の中で何故私が大体の状況を把握し、対応できたのか。

実のところ、全裸で髪を撫で回されるという状況は結構な頻度であるのだ。

というか、銭湯に行くとほぼ必ずと言って良いほどおばーちゃんが寄ってくる。

富山でも、福井でも、愛媛でも、もちろん名古屋の銭湯でも。大阪なんかはえらい騒ぎようで、「あんたえらい綺麗な髪しよるなぁ〜やっぱりあれか?パーマ屋さんは梅田の方まで行きはるん?ほれ!みっちゃん、あんたも触ってみ〜!」てな具合で、まさにおばーちゃんホイホイ状態であった。

 

こうして壁の反対側から響いてくる騒ぎを確認する度に、夫は散髪断固反対ポイントを貯めていく。

美の価値観は時代によって移り変わるが、女性の長い髪が美しいと感じるのは、平安時代は紫式部の頃から、いや、もっと前からどの土地でもずっと変わらない!という説を唱え始め、他人が見て感動するほどの髪を持っているのに、わざわざそれを手放す必要はない!これは誇るべき個性なのだと。

確かに一理ある。

だが、「紫式部もそうだ!」と言われて「そうかそうか!」とはならない。

もう黙って切ってしまおうかと思っていた矢先、つい先日宮古島に行った時久しぶりに私の”おばーちゃんホイホイ”が発動した。

お店の順番待ちをしていた私は、どこからともなくフラ〜っと現れたおばーに例によって髪を撫でくり回され、

「似合ってるさ〜ずっと長くいてさ〜もっと長くしてもいいさ〜」と言われた。

(正確には聞き取れなかったが、多分そんなような事だと思う)

振り返ると、案の定これみよがしの顔をした夫がいた。

 

(流石に宮古島の海は綺麗)

(北海道に引き続き、ここでもご当地ハンカチを買う人)

(ヌドクビアブは素晴らしい場所だった)

(後ろにいたギャルたちが、うわめっちゃ青!青過ぎてもはや紺!と言っていた下地島の通り池は確かに紺)

(同じタイミングで宮古島に来ていた友人にバッタリ会い、写真を撮ってくれた。それにしても派手な我々)